すべてのアイデアを無難なものに削ぎ落とすことなく、創造性とパフォーマンスを両立させるにはどうすればよいのでしょうか? 両者をライバル扱いするのをやめ、根拠となるデータを早い段階に移すことです。メディア予算を確定する前にクリエイティブを事前テストすれば、データは勇気ある作品への判決ではなくなり、作品をより良くするためのツールになります。
この議論に新たな火種が加わりました。Marketing Weekのインタビューで、Sir John Hegartyは現代のマーケティングを「反復的で、陳腐で、退屈」と評し、その原因は、スプレッドシートは理解してもアイデアは理解しない「左脳型の思考の持ち主」で固められたブランドやエージェンシーにあると指摘しました。その根拠として同氏は「新製品の発売はおよそ95%が失敗している」と述べ、データがこれだけ増えたにもかかわらず、この割合は20年間変わっていないと言います。症状についての指摘は正しいと言えます。ただ、診断にはもう一歩踏み込む必要があります。問題はデータそのものではありません。データが届くタイミングと、その使われ方なのです。
なぜ創造性とパフォーマンスは、相反するものに感じられるのでしょうか?
物事が起こる順番のせいです。よくある場面を思い浮かべてください。クリエイティブチームが3つの案を提示します。クライアントのパフォーマンス担当者が、もっともな質問をします。「これがうまくいくと、どうして分かるのですか?」誰にも分からないので、最も無難な案が採用されます。あるいは、作品がそのまま公開され、実際のお金を使ってテストされることになります。
大胆な案の数字が最初の週に落ち込めば、配信は停止されます。チームは当然の教訓を引き出し、次はもっと無難にいこうとします。これを数年繰り返せば、Hegarty氏が描くような業界のできあがりです。
この流れでは、パフォーマンスデータは常に、重要な意思決定が終わった後にしか届きません。それは事後の検死報告のような役割しか果たさず、そんな報告を待ちながら最高の仕事ができる人はいません。
なぜ繰り返されるのか:管理するフィードバックと、情報を与えるフィードバック
心理学者のEdward DeciとRichard Ryanが提唱した自己決定理論は、この問題を多くの点で説明してくれます。人が最高の仕事をするのは、3つのことを感じられるときです。自律性(仕事をある程度自分でコントロールできること)、有能感(上達していると感じられること)、そして関係性(一緒に働く人や、仕事を届ける相手とのつながり)です。
この理論は、有益な区別を示しています。同じ数字でも、管理として受け取られることもあれば、情報として受け取られることもあるのです。お金を使った後に仕事を評価するためのダッシュボードは管理だと感じられ、人は無難にやり過ごそうとします。チームがまだ手を打てる段階で早めに共有されたスコアは、情報だと感じられます。作品をつくった人たちから仕事を取り上げることなく、有能感を育ててくれるのです。
オーディエンス側の視点もあります。この記事の根底にあるインサイトは、「本物らしさは、完璧さのほころびにこそ宿る」というものです。アイデアにリアリティを与える粗削りで人間味のあるエッジは、慎重すぎる承認プロセスで真っ先に磨き落とされてしまうことが少なくありません。RP3 AgencyのBeth Johnson氏は、Forbes Agency Councilのパネルへの寄稿で、「鋭い戦略と人間の判断がなければ、AIは画一化の津波を加速させるだけだ」と警告しています。うまく使えば、事前テストは粗削りなアイデアに、磨き落とされずに生き残るための根拠を与えてくれます。
クリエイティブの事前テストとは何か、そして何が変わったのでしょうか?
クリエイティブの事前テストとは、広告やコンセプトを出稿前に評価し、その成果を予測するとともに、まだ修正できる段階で弱点を見つけることです。従来はパネル調査やフォーカスグループ、数週間に及ぶ実査、そしてテレビCMの予算でもなければ正当化できないほどの費用が必要でした。
AIは、その経済性を変えました。今では、人がクリックする可能性などの予測成果に基づいて、コンセプトを数週間ではなく数分でスコアリングできます。これにより、これまで調査予算のなかったソーシャルやデジタルの施策、つまり独立系エージェンシーが手がける仕事の大半でも、事前テストに手が届くようになりました。
ただし、注意点が1つあります。スコアが予測できるのは、そのスコアが予測するよう設計されたものだけです。クリックされやすさのスコアから分かるのは、目の前に表示された広告への反応です。独自性、長期的なブランド構築、そのアイデアがブランドに忠実かどうかについては何も教えてくれません。そうした判断には、今もセンスのある人が必要です。
大胆なアイデアを潰さずに事前テストを使うには、どうすればよいでしょうか?
- スコアリングの前に、広告の役割について合意する。その広告が狙うのはクリックか、記憶に残ることか、シェアか。スコアは、それが実際に測定する役割に対してのみ使いましょう。
- 完成した広告ではなく、案の段階でスコアリングする。変更のコストが低く、誰も最終版に思い入れを持っていない早い段階で、ラフなコンセプトをテストしましょう。
- まずクリエイティブチームに見せる。クライアントが目にする前に、作品をつくった人たちに結果を共有しましょう。チームの自律性を守り、スコアを改善のためのブリーフに変えることができます。
- スコアを診断として読む。冒頭のフレーム、フック、コピーなど、コンセプトの足を引っ張っている要素を探し、アイデア全体をボツにするのではなく、その要素を修正しましょう。
- 大胆な案を1つ守る。最も個性的なコンセプトは、スコア表のトップでなくても、許容範囲のスコアであれば次に進めると事前に合意しておきましょう。
- 市場で、低コストで確認する。本格展開の前に、事前に合意した少額の予算を有力な案に投じ、実際の結果をフィードバックしましょう。そうすれば、スコアが何を予測でき、何を予測できないのかを全員が学べます。
事前テストの有無で、根拠となるデータの位置づけはどう変わるのでしょうか?
| 段階 | 事前テストなし | 事前テストあり |
|---|---|---|
| コンセプトレビュー | 主観頼みで、声の大きい人が勝つ | スコアがプロの判断を後押しする |
| クライアントへのプレゼン | 「信じてください」 | 大胆な案を裏付ける根拠 |
| メディア出稿 | 実績のない作品を実際のお金でテストする | スコアリング済みの案に予算を投じる |
| 最初の週の落ち込み | 大胆なアイデアが停止される | 事前テストの結果と照らし合わせたうえで調整する |
| チームが学ぶこと | 次はもっと無難にいこう | どの要素が効いているのか、そしてその理由 |
理屈の上では小さな変化ですが、実際には大きな違いを生みます。根拠となるデータが、評価しかできないプロセスの最後から、助けになれる最初へと移るのです。
AIが手助けすべきところと、関わるべきでないところは、どこでしょうか?
同じForbesのパネルが、有益な線引きを示しています。MultiplyのMatt Jayson氏は、キャンペーンの設定とQAが最も自動化しやすい業務だと述べています。「ある急成長中のクライアントでは、それだけで優に週20時間分の見えない作業になります」。SWOON MEDIAのNatacha Grey氏は、価値が「アセットを作ることから、より良い意思決定を大規模に行うことへ」移りつつあると説明しています。
それが正しい役割分担です。設定、QA、リサイズ、スコアリングは機械に任せ、人はアイデアそのものにより多くの時間を使えるようにする。Hegarty氏の指摘はもっともです。データはアイデアに情報を与えることはできても、アイデアを生み出すことはできません。
ここでスコアリングツールが真価を発揮します。Defy Monitorは、メディア出稿前にコンセプトのクリックされやすさを予測してスコアリングします。そのスコアリングは実際の広告パフォーマンスと照らし合わせて検証されているため、チームは費用をかける前に、そのクリエイティブが成果を出すかどうかを把握できます。Defyプラットフォーム全体の中でこれがどう機能するかもご覧いただけます。どのアイデアを形にする価値があるかという判断は、引き続き人が担います。
大胆なアイデアを採用する前に証拠を求めるクライアントには、何と伝えればよいでしょうか?
「もちろんです」と答え、実際に見せましょう。証拠を求めるクライアントは創造性の敵ではありません。たいていは、上司から同じ質問をされる立場のマーケターです。スコアとその根拠、そして市場での小規模なテスト計画を示しましょう。そのうえで、数字を敵ではなく味方につけて、アイデアそのものの価値を訴えるのです。



